今回は、株式会社松尾研究所でデータサイエンティストとして活躍する浮田純平さんにお話をお伺いしました。浮田さんは学生時代に東京大学松尾・岩澤研究室が主催する「グローバルインテリジェンス寄附講座(GCI)」を受講され、優秀生にも選ばれたことがあるメンバーです。浮田さんが松尾研にジョインした理由や、入社後関わっているプロジェクトについてお伝えします。
松尾研講義を通したデータサイエンスとの出会い
ー松尾研との関わりやGCIを受講されていた当時の印象について教えていただけますか?
GCIを受講したのは2015年で、もう9年前になります。当時、大学在籍時に実験研究をしていたのですが、大量のデータを扱うプロジェクトが立ち上がり、データ分析や機械学習に興味を持ちました。研究室内で勉強会を開いたりもしたのですが、当時は今ほど情報が多くなく、参考書や講義も限られていました。そんな中、偶然GCIの講義を知り、参加してみようと思ったんです。そこで「松尾研」という名前も初めて知りましたね。
ーどんな研究をされていたんですか?
マウスを使って、そのマウスが起きているか寝ているかを自動で判定する研究をしていました。ゴールは、なぜ動物が寝たり起きたりするのかを解明することでしたが、そのためには睡眠状態を正確に判定する必要がありました。データ分析や機械学習の技術を活用することで、このプロセスを効率化できると考えて取り組んでいました。
ーGCIを受講したことで得られた学びは何だったのでしょう?
やはり、機械学習を体系的に学べたことですね。GCIではさまざまなツールの使い方や技術を初めて体系的に学べました。また、ビジネスでの応用例も学べたのが大きかったです。外部のゲストスピーカーが、自社で機械学習をどう活用しているか具体例を交えながら話してくださり、研究以外の応用方法を知るきっかけになりました。当時は研究しか機械学習の応用先を知らなかったので、「実際の現場ではそんな風に使われるのか」ということを知ることができたのが結構面白くて。機械学習を、もっと深く勉強しよう、という気持ちになりました。
幅広いドメインへの関わりと、マネジメントの機会を求め松尾研へ
ー浮田さんは入社エントリも書いていただいていると思うのですが、どういった経緯で松尾研究所に入社されたんですか?
前職で医療ドメインでの経験を一定積むことができた感覚があったため、ドメインを限定されない機会は探してました。他の分野の事業会社か、もしくは松尾研みたいにいろんな業種と関わるような仕事が候補かなと。また、マネジメント経験を積みたいとも思っていたので、その点でも松尾研はマッチしていましたね。一人でできることは、自分が成長すれば広がるとは思いますが、やはり限界があると感じています。それに比べて、メンバーみんなで力を合わせて大きな成果を出せる状況のほうがもっと面白いのではと思ったんです。だからマネジメントを経験してみたい、と思っていました。
上記の点がマッチしたことと併せて、前述した通り松尾研の講義を受けていたり、松尾研と以前に関わりがあったという点も理由として一つあります。ただ、名前は知っていても、現在の組織規模や具体的な内容は知らないことが多かったので、面談で話を聞く中で社会的意義の大きなプロジェクトを進めているのだなという印象を持ち、面白そうだなと思いました。
プロジェクトの魅力は
「課題の抽象度の高さ」と「技術的な難易度の高さ」
ー入社後のギャップはありましたか?
選考中に聞いていた内容と大きなギャップはなかったのですが、扱う課題の面白さに関しては、想像以上だと感じました。例えば、先日リリースが出た「松下幸之助」再現AIの開発など、機械学習の典型的な活用事例ではなく、本当に教科書には載っていないようなケースが多いんです。こういった課題に触れられるのは松尾研ならではだなと感じましたね。
「面白さ」を2つに分解すると、まず「課題の抽象度の高さ」です。たとえば広告のクリック率を0.1%上げるといった定番の課題も悪くはないですが、社会的意義がどのくらいあるのかというところで人によっては好みも分かれるところで。松尾研にはクライアントの上層部から抽象的な依頼が直接来ることが多く、社会的意義が高いものが多いです。抽象度が高い分、問題をブレークダウンして具体化するプロセスが非常に重要になりますが、やりがいも大きいです。
もう1つは「技術的な難易度の高さ」ですね。最初は解き方が全く見えない課題でも、論文を調べたり、みんなで議論したりする中で解決策が見えてきて、最終的に形になると達成感があります。解き方が定型化されていない問題に対して、新しい解決策を見出す過程は面白いなと感じますね。
ー現在はどのようなプロジェクトに関わっているのですか?
製造業や食品業界などのクライアントとのプロジェクトに関わっています。例えば、クライアント社内で人が行っていた業務をAIで自動化する取り組みを行いました。難しい部分はシステム導入のフェーズですね。要件定義から開発、クライアント側のエンジニアと調整しながら進めるプロセスは、短期間で成果を出す必要があり、大変さはありました。
ー松尾研ではどのようにプロジェクトを進めているのですか?
定例ミーティングやSlackを通じて、プロジェクトの進捗や技術的な知見を共有する機会が多いです。例えば、僕が担当しているプロジェクトに対し、他のメンバーが過去のプロジェクトで得た知見を共有してくれて、それを自分の課題に応用することができました。他社ではここまで積極的に情報共有が行われる文化は少ないかもしれません。
ー松尾研で働く中で、浮田さん自身が変化を感じる点はありますか?
マネジメントをしているという理由もありますが、要件定義など全体感の議論をする時間は増えました。また、クライアントとの会話の機会も増えましたね。多様なバックグラウンドを持つ方々とコミュニケーションを取りながら、課題解決に向けて物事を前に進める力がついたのではないかと思います。
ー最後に、松尾研でこれから挑戦してみたいことを教えてください。
より難易度の高い課題が来ても、難なくこなせるように自分の力も高めていきたいですね。また、せっかく松尾研にいるので、長期的には医療や金融といった特定の業界全体にインパクトを与えるようなプロジェクトを仕掛けたいと思っています。この組織だからこそ動かせる人や組織はあると感じているので、多くの人を巻き込みながら、社会に良い影響を与えられる仕事をしていきたいですね。
(プロフィール)浮田 純平
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。エムスリー株式会社を経て松尾研究所にジョイン。
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