「AI教育は社会変革のための手段。」スピード感を持ち事業を推進する、AI教育事業ディレクターの挑戦。

今回ご紹介するのは、社会人教育の領域で経験を積んだのち、株式会社松尾研究所にてAI教育事業を推進する大牧 信介さん。「教育は社会的インパクトが大きい」と語る大牧さんに、これまでのご経験やジョインの背景、AI教育事業の全貌についてお伺いしました。

産業や社会を変革する、教育領域での経験。

ーこれまでどのような経験をされてきましたか?

大手企業向けに経営人材育成や組織開発、新規事業開発の支援を行なってきました。

半年から一年の経営人材育成プログラムを各社の経営環境・事業特性に合わせてカスタマイズして設計します。企画設計から、戦略・マーケティング・リーダーシップ、自社課題提案の講師として、多くの業界・プログラムに携わってきました。

新規事業開発の支援では、企業内のビジネスコンテストの企画運営支援やスタートアップとマッチングをして新規事業案を創るアクセラレーションプログラムなども提供してきました。

ー現在の業務に通ずる部分もあると思いますが、社会人教育の面白さを感じたのはどのような点ですか?

選抜研修の受講者が、3年・5年・10年で企業の経営幹部や役員、社長になっていくことですね。研修の場で自社の経営課題に対する解決策や新規事業案を提言するのですが、実際に受講者が事業のトップ、経営トップになり、当時の提言内容を実現されています。そういった変革の現場を作ってそれを目撃できるのが、この仕事の醍醐味ですね。3年・5年という時間軸は長めですが、単一・短期のプロジェクトとは違い、組織の変化と事業の成長の両面を見ながら、伴走出来る点が面白いです。

教育というと、つい個人の知識、スキルの向上だけに目が行きがちですが、組織を変え、事業を創り、産業・社会を変革するまで視野に入れると、教育は社会変革をするための手段と考えています。

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技術への手触り感を求め、AI教育の領域へ。

ー なぜ松尾研にジョインしたのですか?

20年程度在籍していたので、なんとなく違うフィールドを探していたことに加え、問題意識として、「デジタル技術への手触り感のなさ」がありました。2013年頃に技術経営の修士も取得しましたが、文系出身でビジネス教育が中心でしたので、経営を考える上で、技術の視点から経営を理解したいというのが根底にありました。私自身もビジネスサイドからDX戦略の講義等をしていましたが、AI・デジタル技術がどのように実装され、どんな難しさがあるのかを正しく理解したいと思うようになりました。丁度そんな問題意識があった時に、松尾研がAI教育をやっていることを聞き、面白そうだと考えました。

松尾研の提供しているAI教育コンテンツについては、全くの素人でしたが、教育プログラムの企画・設計、講座提供、AIを活用した事業開発におけるビジネス視点など、これまでの経験値を活かせるので、うまく融合できそうだと思い、ジョインしました。

今後の社会に必要なスキルを学ぶ手段として、AI教育事業を提供。

ー松尾研ではどのようなAI教育事業を展開しているのですか?

松尾研では、これからの社会で活躍する人材に必要な要素として、①仮説思考 ②デジタルスキル ③目的思考 の3点を挙げています。その中でも、重要視しているのはデジタルスキルです。なぜならデジタルスキルをベースにすることで、仮説思考においては仮説検証のサイクルをより高速に回すことができ、目的思考においては技術の動向を捉えることで未来を構想する解像度が上がり、そこから逆算して現在の課題を捉えることができると考えるからです。

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この「デジタルスキル」を身に付けるための手段として、AI教育事業にて「AIプロジェクトリーダーコース」と「デジタル新規事業リーダーコース」を企画・準備中です。

また、松尾研究所は東京大学松尾研究室とビジョンを共有し、伴走する組織です。企業憲章にも記載の通り、個社の利益最大化を目指すのではなく、公に利益を還元していく組織と自認しています。故に、社会全体・産業全体に対する最適化の視点で研修プログラムを検討し、提供できることが特徴と考えます。

実は香川高等専門学校を起点に、毎年100人以上の全国の高専生向けにオンラインでAI講座を展開し、高専生のAI教育と起業家支援もしています。この取り組みでは、受講した高専生がDCONというディープラーニングを活用したビジネスコンテストに参加し、見事受賞したという実績もあります。これはビジネスとして地域課題の解決に繋がる取り組みとして進めており、公に資する組織である松尾研だからこそできることだと感じています。

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ー研修を通して受講者は何を得られるのですか?

プログラミングを学び、個人で実装経験を積めることが大きいですね。最初は四苦八苦しながら取り組みますが、試行錯誤を繰り返すうちに、ちょっとしたコードを書けるようになってきます。ノーコードのWebアプリも使いながら、実際に作ってみて動かす体験もします。知識の理解にとどまらず、実際に手を動かし体験的に理解することを重視しています。

しかし、個人でできる感覚を掴んだとしても、組織の中で成果が上がるわけではありません。受講者が研修の中で小さい成功体験を積んだ後、自社のAIプロジェクトを構想し、進めていくことができるように、松尾研のAIソリューション事業との連携も行っていきます。

とはいえ、このプログラムではビジネス系人材がAIエンジニアになることを目指すのではありません。あくまで、AI技術を体感的に理解することで、AIでできること・できないことを峻別し、インパクトある課題設定と実現可能なソリューションの方向性を設定できるようになることを目指します。また、AIプロジェクトにおいて、企画者としてエンジニアチームと共通言語を持ち、互いに適切なコミュニケーションができるようになります。


ー教育領域での長年の経験を通し、教育に対してどのような思いを持っていますか?

教育によって変わるか変わらないかは本人次第だと思っています。提供側が、考え方を変えよう、行動を変えようというのは不遜で、考える場や素材を用意し、実践できる機会や環境を提供しますが、変わるかどうかはその人の状況次第です。その機会と本人の思いがピッタリと当てはまって変わる方、優秀だけど変わるタイミングではない方、などさまざまです。

組織変化や社会の変化を目指して教育を行い、学んだ人が結果として行動する。そして新たなプロジェクトが立ち上がり、世の中への価値提供に繋がる。こういう順番だと思っているので、個人の変化に立ち会うことへのやりがいは結果としてありますが、そこだけを目指してやるものではないと考えています。社会全体の変化に大きく関わっていくということが、教育の醍醐味だと思います。

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0→1から10→100まで。異なるフェーズを次々と経験できる環境。

ー松尾研での経験を通し、大牧さん自身は何が変わったと思いますか?

入社直後はAI技術の基本的な用語も分からない状態でしたが、データサイエンスやディープラーニング、WEB工学関連の講義資料、演習課題など豊富なコンテンツやAIソリューション事業が取り組んでいる多くのプロジェクト事例があり、学ぶことができました。それによって、ビジネスと技術を理解した上で、どういう経営組織であるべきか、どのような変革プロセスを進めていくべきかという仮説の解像度が高まっています。まだ体系化できていませんが、様々な関係者とコンセプトを議論しながら、仕込みをしているところです。

ーありがとうございます。松尾研の組織の特徴はどんな点ですか?

1つは、スピード感です。松尾研はアイデアから実現までの時間軸が早いです。大企業だと、アイデア検討から実現まで一定の時間がかかり、いくつものハードルがあります。松尾研では数ヶ月単位で新たな企画を動かしている感覚です。実験的に色々なことを仕掛けられるのは非常に面白い点ですね。

もう1つは、スケール化です。アイデアを具体化する0→1フェーズの取り組みもありますが、1→10、10→100フェーズの活動もあります。社会的なインパクトも目指していますので、小さく始めながらも、スケール化させる仕組みを整えていくことも同時に取り組んでいます。

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(企業向けリスキリング教育をテーマとしたイベントにて、モデレータを務めた。)

5〜10年先を見据え、社会にインパクトを与える教育インフラを。

ー今後の展望を教えてください。

5-10年後に振り返って、今の活動がより社会的にインパクトの大きな取り組みになっていたらと思っています。今は立ち上げ期なので小さな種を仕込んでいる段階ですが、それらが拡大・統合され、振り返ったら大きな教育インフラを作れた、変化の潮流を起こせたという活動になっていたら嬉しいです。この1年でもすでに大きな変化を実感しています。

ー未来の仲間へのメッセージをお願いします。

AIの技術やビジネスの学び方、経験の積み方は様々ですが、AIの実装や教育をしているど真ん中でキャリアを積むことは、必ずプラスになります。また、教育は自分一人でプレイヤーとして及ぼす影響範囲よりも、1000人教育したら自分の1000倍影響を及ぼすことできる、そんなインパクトの大きさがある領域です。

AI技術を学び、組織変革を支援する。松尾研では、その事業を創る活動ができます。アカデミアに近い組織で先端技術に触れ、優秀な学生や起業家との連携など、多様性に富む場で知的刺激も得られます。松尾研から日本を変えるうねりを起こしたい方、そんな想いを持って事業を推進してくださる方とご一緒できることを楽しみにしています。

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(プロフィール)大牧 信介

2021年7月より現職。AI教育事業にて、AI領域から産業界のDXを推進するビジネスパーソンの育成に取り組んでいる。

大学卒業後、大手リース会社をへて株式会社グロービス。グロービスでは、コーポレート・エデュケーション部門(法人研修部門)にて顧客企業の経営者育成プログラム、新規事業開発のワークショップ、アクセラレーションプログラム等、数多くの企画支援実績がある。グロービスの企業研修講師として、経営戦略、デジタル戦略、デザイン思考、新規事業開発などのセッションを担当している。

立命館大学経済学部卒業。東京理科大学大学院イノベーション研究科修了(技術経営修士)。


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